土地家屋調査士試験にも実務にも役立つ先例を100個厳選して紹介していきます。
第1弾
Q,弁護士は土地家屋調査士の仕事をすることができるのか?
A,できない。
これは結構驚かれた方も多いのではないでしょうか。
弁護士ができる職務として弁護士法にはこうあります。
(弁護士の職務)
第三条
弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。
弁護士は、1項の「一般の法律事務」を職務としているため、法律事務については広範な職域を持っており、ほぼ全ての法律事務を行うことができると考えられます。
逆に、弁護士でない者が弁護士業務をすることを非弁行為といい、別段の定めがない限り法律事務を行うことは弁護士法で罰せられます。
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
このただし書きがあるため、各士業はそれぞれの法律により(土地家屋調査士なら土地家屋調査士法により)法に定める範囲で法律事務を行うことができるとされている訳です。
これだけ強力な弁護士の職域に対してくってかかったのがS34の法務省の民事局長ということになります。
(昭和34年12月1日付福井弁護士会会長照会・昭和34年12月26日付民事甲第2986号民事局長回答)
弁護士が土地家屋調査士の業務に属する申告手続をすることの可否について
左記の件に関し疑義を生じたるを以て何分の御指示相仰ぎ度く。
記
土地台帳又は家屋台帳に関する登録申請手続に付弁護士は土地家屋調査士法第19条の例外として弁護士法第3条により右申請を代理し得るや。
回答
本年12月1日付書面をもつて照会のあつた標記の件については、消極に解すべきものと考えます。
消極とは、平たく言うと「できない」ということで、否定する場合に使う言葉です。
「土地台帳又は家屋台帳に関する登録申請手続」現在の「表示に関する登記の申請」です。
即ち、弁護士は、弁護士法3条により法律事務一般を職域としていても、表示に関する登記の申請を職務として行うことはできないということになります。
しかし、表示登記が法律事務ではないということにはならないので、これが直ちに非調行為に該当するのかというと、法にその定めがない以上疑義が生じるところではあるように思いますが、登記を管掌する法務省がそのように回答しているのですから、弁護士が表示登記を申請してはならないのは間違いないでしょう。